2010年10月31日 02:23
■自己存在の月13日 (G10/30) KIN205 赤い惑星の蛇 (by D)
KIN145(G8/31)の朝は、実に幻想的だった。アユン渓谷から湧き立つ霧が、濃緑の谷間をゆっくりと流れて行く。前日は見えなかった遠くの山々も、澄んだ空の向こうにくっきりとその姿を現してくれている。辺りが明るくなるにつれ、鳥や獣達が美しいシンフォニーを奏で始め、谷の向こう側の森の上端も朝陽に照らされて輝き出した。
あまりの気持ち良さに、そこからの展望がこのホテルの売りとなっているプールサイドで瞑想。人工音が一切しないので、目を閉じると映画のジャングルシーンのような様々な音が、あちこちから立体的に響いてくる。澄んだ空気と木漏れ日の中で何とも言えない時間を過ごしてから、そのままオープンエアのレストランへ。谷からの風を感じつつ朝食を頂く。
お天気も良いので、午前中はプールでのんびり過ごす事にしたのだが、中国系のカップルが結婚式用の装いで撮影を始める。台北でも見かけた事があるが、どうも景色の良いところで記念写真を撮りまくる風習があるようだ。専属の撮影スタッフが「5分だけ」というので待っていたら、延々30分以上も続いて呆れてしまった(お昼のチェックアウトの頃にも衣装を変えつつ他の場所でまだやっていた)。
夜には、同じ系列のアリラ・マンギスに移動するのでホテルに荷物を預け、シャトルバスでウブド中心街へ。目の前の大木の名前がそのまま店の名となっているブヌテで少し遅めのランチ。どうも店が通路にもなっているようで、やたらと人が店内を通り抜けて行く。その後、街中でタクシーをつかまえて、11世紀頃の遺跡と言われるゴア・ガジャへ。遺跡もそれなりに面白かったが、個人的には、真ん中にそびえ立つ「聖なる木」と、裏手で見つけた隠れ田圃と、出口に居たニシキヘビを首に巻いたおじさんがの方が印象に残った。
待っていてもらったタクシーで最初の場所に戻り、街中を散策しつつ買い物タイム。通りの入口に仏陀像のあるジャラン・ゴータマは、地元の人たちがのんびり暮らしている感じが残っていて味わい深い。ケチャが行われるタマンサリ寺院の目の前にあるKedaiCafeで軽く夕食を済ませてから会場へ。
ケチャは、チャッ・チャッッ!とかけ声を掛ける号令者や、ずっとウーニャ・ムーニャ・ウーニャ・ムーニャを繰り返す人がいたり、チャチャチャチャ・チャチャチャチャと激しくやっていたかと思うと、突如ガクッとうなだれてフン・タッタッタ、ウン・タッタッタとなったり、集団で行うリズムと人の声の力が織り成すダイナミックな変化が何とも面白い。
ケチャに続いて登場したのは、小学生くらいの女の子二人。トランス・ダンスということらしいが、踊りの順番はきちんと決まっていて、ある場面になると必ず二人揃ってバタッと倒れて、そこに僧侶のような人が現れて聖水をかけると、またムクッと起きて同じ踊りを繰り返すのだった。そのおぼつかない感じがまた可愛らしいのだが、これくらいはっきりやってくれると、「やっぱり演出もあるのね」と納得できる。
しかし、その後に続いた、成人男性によるファイアー・トランス・ダンスは演出とは言えない迫力があった。まず中央にヤシの木の皮を集めて小山をつくり、そこに油をたっぷりかけてから点火。かなり大きな炎が立ち昇り、一番前の席にいた私達の所にもその熱が伝わって来る。そこに既にトランスに入っていると思われる男性が、木の馬に跨ったような格好(実際は自分の足で立っている)で登場。広場の端に集まっているケチャメンバーのリズムに合わせて炎の周囲をグルグル巡っていたかと思うと、突如中央に突進してヤシの皮をそこらじゅうに蹴散らした!
最前列にいた人々はどよめき、私達の右隣にいた子連れの親子は子供をサッと抱きかかえていた。何しろ自分達のすぐ足元にも破片が飛んで来るのだ。しかも手をかざしてみるとかなり熱い。係のおじさんがほうきでその破片を中央に集めると炎が再び強くなり、男性が周囲をグルグル回った後、また蹴散らしたり中央を走り抜けたりした。都合、5,6回はそんな事を繰り返しただろうか。終了後、呆けたような顔で地べたに座っているその男性を、客が取り囲んでいるので、私もチップを持って近くに行ってみた。
全身にかなり汗をかいていて、足はススで脛の辺りまで真っ黒になっている。本人に確認すると、触ってもいいとのことだったので、軽く指で足裏を押してみたりもした。角質でカチカチになっているのかと思ったら、そうでもなくて、普通に柔らかい足だったし、やけどや水ぶくれがあるようにも見えなかった。よく「火渡りは実際は大して熱くない」などと解説する人がいるが、間近で熱の強さを感じた身としては、「他のものはいざ知らず、これは特殊なトランス状態に入ってないと無理だろう」という印象を受けた。
奇しくも、この日は2番目の月の「2・蛇」の日。「挑戦」を意味する音「2」がダブルで効いている魔術の亀の日で、「蛇」のキーワードは「生命力・生き残らせる・本能」。まさにそんな感じのものを一日の締めに見せてもらった気がした。興奮冷めやらぬ感じで寺院の外に出ると、アリラホテルの車が荷物を載せてちゃんと迎えに来てくれていた。そのままウブドに別れを告げて、マンギスへ。暗闇に浮かぶ星空を楽しんでいるうちに、45分ほどで到着。道が空いていたせいもあるが、想像よりずっと早かった。おそらく日中ではこうは行くまい。
この日の紋章とシンクロする105(1・蛇)号室に入ると、品のあるネコが窓の外のテラスにどこからともなく現れて、私達を出迎えてくれた。波音の聞こえる部屋でラップトップを開くと、『LOVE & THANKS』誌の編集長をしているS君からメールが入っていたので、その場で校正して返信。私の担当コーナーはP55で、このホテルは全55室。意味無く「これで良し」と思いつつディープな一日を終えた。(つづく)
KIN145(G8/31)の朝は、実に幻想的だった。アユン渓谷から湧き立つ霧が、濃緑の谷間をゆっくりと流れて行く。前日は見えなかった遠くの山々も、澄んだ空の向こうにくっきりとその姿を現してくれている。辺りが明るくなるにつれ、鳥や獣達が美しいシンフォニーを奏で始め、谷の向こう側の森の上端も朝陽に照らされて輝き出した。


あまりの気持ち良さに、そこからの展望がこのホテルの売りとなっているプールサイドで瞑想。人工音が一切しないので、目を閉じると映画のジャングルシーンのような様々な音が、あちこちから立体的に響いてくる。澄んだ空気と木漏れ日の中で何とも言えない時間を過ごしてから、そのままオープンエアのレストランへ。谷からの風を感じつつ朝食を頂く。
お天気も良いので、午前中はプールでのんびり過ごす事にしたのだが、中国系のカップルが結婚式用の装いで撮影を始める。台北でも見かけた事があるが、どうも景色の良いところで記念写真を撮りまくる風習があるようだ。専属の撮影スタッフが「5分だけ」というので待っていたら、延々30分以上も続いて呆れてしまった(お昼のチェックアウトの頃にも衣装を変えつつ他の場所でまだやっていた)。
夜には、同じ系列のアリラ・マンギスに移動するのでホテルに荷物を預け、シャトルバスでウブド中心街へ。目の前の大木の名前がそのまま店の名となっているブヌテで少し遅めのランチ。どうも店が通路にもなっているようで、やたらと人が店内を通り抜けて行く。その後、街中でタクシーをつかまえて、11世紀頃の遺跡と言われるゴア・ガジャへ。遺跡もそれなりに面白かったが、個人的には、真ん中にそびえ立つ「聖なる木」と、裏手で見つけた隠れ田圃と、出口に居たニシキヘビを首に巻いたおじさんがの方が印象に残った。
待っていてもらったタクシーで最初の場所に戻り、街中を散策しつつ買い物タイム。通りの入口に仏陀像のあるジャラン・ゴータマは、地元の人たちがのんびり暮らしている感じが残っていて味わい深い。ケチャが行われるタマンサリ寺院の目の前にあるKedaiCafeで軽く夕食を済ませてから会場へ。
ケチャは、チャッ・チャッッ!とかけ声を掛ける号令者や、ずっとウーニャ・ムーニャ・ウーニャ・ムーニャを繰り返す人がいたり、チャチャチャチャ・チャチャチャチャと激しくやっていたかと思うと、突如ガクッとうなだれてフン・タッタッタ、ウン・タッタッタとなったり、集団で行うリズムと人の声の力が織り成すダイナミックな変化が何とも面白い。
ケチャに続いて登場したのは、小学生くらいの女の子二人。トランス・ダンスということらしいが、踊りの順番はきちんと決まっていて、ある場面になると必ず二人揃ってバタッと倒れて、そこに僧侶のような人が現れて聖水をかけると、またムクッと起きて同じ踊りを繰り返すのだった。そのおぼつかない感じがまた可愛らしいのだが、これくらいはっきりやってくれると、「やっぱり演出もあるのね」と納得できる。
しかし、その後に続いた、成人男性によるファイアー・トランス・ダンスは演出とは言えない迫力があった。まず中央にヤシの木の皮を集めて小山をつくり、そこに油をたっぷりかけてから点火。かなり大きな炎が立ち昇り、一番前の席にいた私達の所にもその熱が伝わって来る。そこに既にトランスに入っていると思われる男性が、木の馬に跨ったような格好(実際は自分の足で立っている)で登場。広場の端に集まっているケチャメンバーのリズムに合わせて炎の周囲をグルグル巡っていたかと思うと、突如中央に突進してヤシの皮をそこらじゅうに蹴散らした!



最前列にいた人々はどよめき、私達の右隣にいた子連れの親子は子供をサッと抱きかかえていた。何しろ自分達のすぐ足元にも破片が飛んで来るのだ。しかも手をかざしてみるとかなり熱い。係のおじさんがほうきでその破片を中央に集めると炎が再び強くなり、男性が周囲をグルグル回った後、また蹴散らしたり中央を走り抜けたりした。都合、5,6回はそんな事を繰り返しただろうか。終了後、呆けたような顔で地べたに座っているその男性を、客が取り囲んでいるので、私もチップを持って近くに行ってみた。

全身にかなり汗をかいていて、足はススで脛の辺りまで真っ黒になっている。本人に確認すると、触ってもいいとのことだったので、軽く指で足裏を押してみたりもした。角質でカチカチになっているのかと思ったら、そうでもなくて、普通に柔らかい足だったし、やけどや水ぶくれがあるようにも見えなかった。よく「火渡りは実際は大して熱くない」などと解説する人がいるが、間近で熱の強さを感じた身としては、「他のものはいざ知らず、これは特殊なトランス状態に入ってないと無理だろう」という印象を受けた。
奇しくも、この日は2番目の月の「2・蛇」の日。「挑戦」を意味する音「2」がダブルで効いている魔術の亀の日で、「蛇」のキーワードは「生命力・生き残らせる・本能」。まさにそんな感じのものを一日の締めに見せてもらった気がした。興奮冷めやらぬ感じで寺院の外に出ると、アリラホテルの車が荷物を載せてちゃんと迎えに来てくれていた。そのままウブドに別れを告げて、マンギスへ。暗闇に浮かぶ星空を楽しんでいるうちに、45分ほどで到着。道が空いていたせいもあるが、想像よりずっと早かった。おそらく日中ではこうは行くまい。
この日の紋章とシンクロする105(1・蛇)号室に入ると、品のあるネコが窓の外のテラスにどこからともなく現れて、私達を出迎えてくれた。波音の聞こえる部屋でラップトップを開くと、『LOVE & THANKS』誌の編集長をしているS君からメールが入っていたので、その場で校正して返信。私の担当コーナーはP55で、このホテルは全55室。意味無く「これで良し」と思いつつディープな一日を終えた。(つづく)
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