共振の月6日 KIN122 白い倍音の風

2007年01月15日 22:41

「私を励ますもの」(by L)

中国の古典13課題の臨書に取組んでいた最中、ずっと同じテンションを保つのは容易な事ではなかった。課題は全て、時代背景も異なれば作者も異なる。それぞれがその時代の美の頂点であり、それまでの常識を打ち破る前衛だ。そして、そこに横たわる時間は軽く1000年を越える。それらを実際に13日間で臨書(追体験)してみて予想外に骨の折れた事といえば、(一つ進む毎に難易度が上がるのは織込済みとして)一つの課題を終えて、その延長(経験)ですんなり次が書き進められることは無く、言葉や常識の通じない未知の世界に踏み込むように、次の課題にいつもマッサラな状態で一から向かわなければならなかったこと。ま、新鮮と言えば新鮮。毎日違う相手とデートを楽しむ様なもの(←疲れそう)かしら。結局の所、ずっと同じテンションを保つためには、どう気持ちを切り替えられるか、常にリセットしてそれまでの状態から自由になっていられるかがカギ。浸ってたら無理ね。

以下はお約束の、書の制作期間に私を励ましてくれたもの。

★「光は新宿より」尾津豊子著
クリスマスに友人のNちゃんから頂いた本。それにしても良いタイトル。著者はNちゃんのママで、本の主人公・尾津喜之助親分は何とNちゃんのおじいちゃま!「とにかく読んで!」としか言えないけれど「リサさんのツボに入ると思うの」とのNちゃんの予言通り、私はこの本から本当に沢山の勇気と笑いのエネルギーを頂きました。新宿も、かつてそこに流れていたであろう時間を想像すると全く違う町に見えて来る。やがて時が来て、このNちゃん(本にも登場)にも巡り会う事になるのだなと思うと、人生の不可思議さに切なくなっちゃうね。

★「ヒマラヤの孤児マヤ」岩村史子著
この本を最初に読んだのは9歳の時。ネパールに赴任した日本人医師夫妻の眼を通して書かれた本で、チビッ子時代の私は、この本から大きな影響を受けたと思う。ネパールという国はもちろんのこと、ヒマラヤも、孤児になってしまうマヤ(この本に登場する女の子の名前。ネパール語で愛の意)の様な子供たちの存在も、そしてそれを助ける人々の働きも、この本を通して初めて知った。で、何で今、突然リバイバルかというと、私達の親友の悟郎さんが、この春からネパールの学校に就任することに決まったので、ネパールのことあまり知らないらしい悟郎さんに、ちょっと先輩風吹かせちゃおうかと思って。すんごい昔の本なんだけど、私の心にしっかり刻まれているこの本の名をアマゾンで検索してみたら、ちゃーんとヒット!喜び勇んで注文し読み返したという次第。当時も、今と同じ様に優しい気持ちに包まれたのを思い出した。この展開を9歳の私が知ったら驚くね。

★「バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻」演奏アファナシエフ
美しいピアノの響きからは想像もつかない、世にもおそろしいジャケットデザイン!にビックリしないでください。それはともかく、ライナーノーツにあるアファナシエフのエピソードの方がショッキング。それによると、27歳でソビエト(当時)からベルギーに亡命。ベルギー王立音楽院の教授に迎えられるやいなや、「この程度の生徒達に教えているほど自分はヒマではない」と言い放ち、とっとと教授を辞めてしまったそうな(ガーーン!人ごとじゃないじゃん)。ゴール近くで集中が切れそうになっている時に、たまたまライナーノーツを読み、ショックのあまり正気を取り戻す事が出来た。彼の名誉のために加えると、肝心の演奏は本当に素晴らしいです。使用しているピアノの音色も録音の状態もパーフェクト。

そしてやっぱり、この子たちの存在。
★「ヒマラヤを越える子供たち
今この瞬間も命がけでヒマラヤを越えている彼らを思えば、私が暖かい部屋でヌクヌクと書を書いたからってそれがなに?の世界。だったらケチケチしてないで、いつもその時にできる最高の事を自分にさせなければ申し訳ないというもの。制作中、ダラムサラTCVにいる私達の小さな里子ちゃんからカードが届き、字も絵も前回より格段に上手になっているのを見て感動。私も、一筆一筆平和への祈りを込めよう、彼らの幸せを願って書こう、と胸熱くなるのだった。

KIN122 白い倍音の風

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