ハトシェプスト・リターンズ!

2007年06月30日 00:55

宇宙の月3日(G6/29) KIN27 青い磁気の手 (by L)

ルクソールで、1903年に発掘されたミイラが、DNA鑑定の結果、ハトシェプスト(古代エジプト第18王朝5代目の女性ファラオ)のものだと確認されたという。そのニュースを知った瞬間、一気に10年ほど前に引き戻されてしまった。

10年ほど前、ハトシェプスト葬祭殿で起きたテロ(ルクソール事件)の翌々日、私はその現場である王家の谷にいた。エジプトを旅行中だったのだ。事件当日は、アスワンからルクソールに向かうナイルクルーズ船に乗っていたので、事件の詳細はわからなかった。エジプトは、観光業に関しては大変にシステマティックで、無数にあるナイルクルーズの乗客向けに、ほぼ同じ流れの遺跡観光スケジュールが組まれている。事件が2日遅く起こっていれば、私は間違いなくルクソール事件に巻き込まれていただろう。

王家の谷に行ってみて一番驚いたのは、事件のわずか2日後であるのにもかかわらず、ハトシェプスト葬祭殿が平常通り公開されていた事だ。現場の様子も、まるで何事も無かったかの様に整備されていた。ただ、入り口付近にひっそり手向けられた白い花束だけが、事件のリアリティーを感じさせた。

一方、ナイル河対岸のルクソールの街は、シーン・・・と静まり返っていた。各国の(特に日本からのツアーの)観光客は事件直後に全て引き上げてしまったという。タクシーに乗り、私が日本人だとわかると、「We are so sorry...」の言葉しかドライバーからは出て来ない。普段は陽気(過ぎる)なエジプシャン。泣き顔だらけの彼らを見るのは初めてだった。ナイル河沿いの無数の街灯には、それとは対称的に、その年の観光キャッチフレーズだったのであろう「Smile. You are in Luxor.」と書かれたのぼりが延々と旗めいていた。

私は、アクナトンやツタンカーメンのいた第18王朝がとても好きだ。中でも、ハトシェプスト女王の治世22年間は、古代エジプト史上において、唯一戦争の無い平和な時代であったという。今回確認されたミイラは、発掘以来、誰のミイラか確定できず、あまり大切に扱われもしなかった(名無しのミイラはエジプトにゴロゴロしてるので)らしい。しかし、104(52×2)年という時を経て、ハトシェプストという名前が現実の世界に還って来た事は、私には、何かそれが、これからの平和な世の中の実現のために、眼に見えない作用があるかもしれない、とか、平和の力が呼び戻されたのかもしれない、という希望にも思える。そして、これから来る人達に、Smile ! You are on the Earth !くらいのことは誇らしく言っちゃいたいね、と現役地球人としては思うのである。

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