バリさまさま・9(クトゥさんの家)

2010年10月14日 20:51

電気の月25日 (G10/14) KIN189 赤い共振の月 (by D)

KIN144(G8/30)、ガイドブックでもよく取り上げられている絶景プールのほとりで朝の体操をしてから朝食。街の喧騒とは無縁のこのホテルの素晴しさは、ひらけた空と緑あふれる風景だけではない。谷間を流れるアユン川の沢の音や、様々な鳥・獣たちの美しい鳴き声、そして清冽な空気などを通じて、ウブドの森のエネルギーを直に感じられるよう、と同時に、安全性と清潔さも十分に保持されるよう、随所に配慮がなされている点にある。

王宮のある中心部へと向かうシャトルバスが午前中に出るというので、私達は、予め少し手前の場所で降ろしてもらうようリクエストした。ウブド発祥の地として知られる「グヌン・ルバ寺院」に参拝するためだ。すっかり日が高くなった寺院は人影もまばらで、殆ど貸切状態だったので、本殿と思われる場所の前で天真五相(新体道の型)を捧げてご挨拶。

しばらくすると、坂道の途中にあった学校の生徒と思われる女学生が3人やって来て、私が型を行った辺りかそのやや後方で跪いて、合掌した手に花びらを挟んで祈り始めた。その後、美しい仕草で指先をパッとはじいたかと思うと、花びらを左耳の所に挿した。その後も、3,4名の学生グループ(男子も含む)が次々にやって来ては、同じように祈ったり小さな捧げ物を祠の前に置いたり、掃除をしたりしていた。生活の中に、祈りが溶け込んでいるのが感じられて、何故か嬉しい気持ちになる。

そこからウブド王宮前の観光案内所まで、坂道を歩いて移動。大した距離ではないのだが、暑さでへばってその手前のカフェ・ロータスで冷たいものを頂きつつひと休み。夜に王宮で行われる公演(&翌日の夜のケチャ)のチケットを観光案内所で手に入れてから、近場で自転車をレンタルした。最初に向かったのはモンキーフォレスト。パンフレットに、「猿たちはこの森の主です。皆様は森の来客であるため猿たちを敬ってください」とか「餌はご自由に与えてください」と書いてあるのが新鮮だった。丁寧に扱われているためか、猿たちは人が近付いてもゆったり寝転んだり毛づくろいしたりしていて、攻撃的な気配がまるで無い。もちろん、野生動物はいつ豹変するか分からないが、基本、満たされて安心している場では落ち着いているものなのだ。
 
クトゥ・リエさんの家は、そこからさらに南。地図があればまず迷う事はないのだが、縮尺の感覚がイマイチ掴めなくて少々道を行き過ぎてしまったようだ。少し戻った広場のようなところで自転車を止めて位置を確認していると、そこにジープがやってきて真横に駐車した。降りて来たのは日本人女性で、先方から「道、わかりますか?」と声を掛けて下さった。近くに用事があって車を止めた様子だったが、何というタイミングの良さだろう。地図の見方が間違っていないことを確認し、お礼を述べて、そこから割とすぐのクトゥさんの家に向かった。程なくして、新品になったばかりの看板が見えて来た。色々改装しているらしく、女性達がひっきりなしに門前と中庭を行ったり来たりしつつ土を運んでいる。

中に入ると、ちょうど日本人の母娘が相談を終えたところだった。満足げな様子で現地ガイドと帰って行くところをLがつかまえて、謝礼をどれ位払ったのか聞き出していた(私はその時、中庭の散策をしていた)。後に、その倍以上の額が相場として書かれている本やサイトも見つけたが、そもそも寄付なので決まった額がある訳ではない。とはいえ、よく下調べもせずに行った身としては、その親子の存在はとてもあり難かった。

続いて、西欧の女性が一人、その次にシンガポールから来たインド系の夫婦が一組という状況で、マネージャーのような男性(後にクトゥさんの後継者と判明)に様子を聞くと、「本当は予約が必要だけど、今日は空いているからいいよ」と3番目で受け付けてくれた。暫くすると、NYから来たというカップル、女性一人、またカップルと客が続いたが、最後のカップルは「今日はもう一杯なのでまた明日来てね」と言われて、断られていた。見れば、受付はAM9~12、PM3~5と入口に書いてある。自分達が到着したのは4時前くらいだったから、色々な意味でちょうど良いタイミングだったようだ。

小説や映画の影響でウブドが大変な事になっているというのを知った友人Nは、「バリの人は朝がものすごく早いから、早朝に押しかけてみたらいい」等と最もらしいアドバイスをしてくれていたが、そこは適当に聞き流しておいて良かった。多分、そういう人がいるから受付時間がわざわざ門に書いてあるのだろう。もっとも、この日の午後、アポなし現地ガイドなしで押しかけたのも、私達くらいだったかもしれないが。西欧の女性が15分ちょっと位で終わったので、すぐに自分達の番だと思っていたら、次のカップルはかなり長くて、途中、クトゥさんは裏手の祠にお祈りに行ったり(どうやら決まった時間に行う日常の儀式とかもある模様)して、結局、小一時間は待った感じがする。

「最初に夫から」とLは伝えたが、クトゥさんは「いや、あんたからだ」と言って、まずLの顔から観はじめた。前のカップルと同じ手順だったので、大体観る場所は決まっているのだろう。まず、耳から始まった。「pretty」は日本語で何という?と聞くので「かわいい」だと伝えたら、その後「かわいい」を連発(笑)。多分、ニュアンスとしては「結構」とか「よろしい」という感じなのだろうが、すっかりインプットされてしまったようだ。小説にもある通り、クトゥさんは大変な勉強家で、色々と言葉をメモしながら話をされる。こういう好奇心、向学心が若さの秘訣なのだろう。

ktbali  本当に勉強家のクトゥさん。英語と同じくらい日本語も話される。初めての言葉は片っ端からメモしまくり。

その後、鼻、口、アゴと続き、全部「良し」か「かわいい」。さらに、目、まゆを観て「大変賢い女性です」。手相からは、「97まで長生きします」とか「時々感情的になります」とか「芸術家(仕事したら成功します)」と読み取る。その後、首の付け根、膝下と続いて終わるのだが、基本良い事しか言わない。前のカップルの時にも、大笑いしたりすることはあっても深刻な顔になることは無かった。外国人には意識的にそうしているのかもしれないが、もしそうだとしても、むやみに脅して怪しげなものを売りつけたりするよりずっといい。

それに、クトゥさんは、様々な国の人との交流を心から楽しんでいる気がする。興が乗ってくると、話が止まらなくなって、待っている人たちのことなどすっかり忘れてしまっているかのようだ。一期一会という心境なのかもしれないが、結局2人で40~50分は観てもらって、最後には「お手てつないで」を日本語で歌ってくれたりもして(戦時中の影響でお年寄りには日本語を解される方がいる)、とても満たされた気持ちでお別れした。また、機会があれば、あの笑顔に触れてみたい。

ktbali2 終始満面、温かなスマイル。クトゥさん、ちょっとだけヨーダに似ているかしら。

実はこの時、石があって手術がどうのという話をチラッとされていたのだが、後にある方のブログで、「結石の手術で入院中」という記事を見つけた。もう退院されて元気にされているらしいが、私達が訪れた数日後には入院していたようだし、今はもう映画も公開されて、短い滞在の中で希望通りのタイミングに観てもらうのも難しそうだ。そういう意味でも、やはり今回は滑り込みセーフだったと言える。ご縁のあったことに感謝したい。(つづく)

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